BANAPA通信

表参道にある小さなギャラリーオフィスで起こる
日々をつづるブログ

リンゴの樹

 

──たとえ明日、世界が滅亡しようとも

──今日私はリンゴの樹を植える。

 

マルティン・ルター(独)の言葉です。

私がこれを目にしたのは

柳田邦夫氏の『「死の医学」への序章』

という本の中でした。

 

ちょうど20年前

当時とても憧れ、尊敬していた恩師が

末期がんに冒され、壮絶な闘病をしており

そのことにひどく動揺した私が

少しでも気持ちを落ち着けたくて

手当たり次第手にした本の中の一冊でした。

 

件の言葉は、たしか冒頭の

十数ページ目あたりに出て来るのですが

そこで号泣してしまい

暫く先に進めなかったのを思い出します。

 

明日、世界が滅びると分かっているのに

樹なんて植えたって意味はありません。

 

しかし、それを人の命に置き換えると

先がもう長くないことが明白ならば

その人のいま生きていることの意味が

なくなってしまいます。

 

けれど、本の中の登場人物は

がんに立ち向かい、その命が尽きる瞬間まで

人の役に立ちたいと願い、行動します。

 

そんな覚悟で生きたいものです。

 

残された時間は永遠ではありません。

時の流れ行く速度は恐ろしく早いのです。

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written by 太田

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