BANAPA通信

表参道にある小さなギャラリーオフィスで起こる
日々をつづるブログ

人間の証明

パパが亡くなってからしばらくして

ある日ママがこんなことを言い出した。

「新聞で見た渋谷にある帽子やさんに行ったの」

パパと結婚するためだけに田舎から出てきて、

何でもパパに相談して決めていた人だった。

ひとりでは何もできないと思っていた。

「へぇー」と気のない返事をしたわたしに

買ってきたという帽子と新聞の切り抜きを見せてくれた。

渋谷から表参道へ向かう青山通りにある老舗の帽子やさんの記事だった。

帽子も記事の内容も憶えていないのだけど

変わったなと思った。

 

青山通りを歩いていたら、あの帽子やさんの店先に

「急なお話ですが8月末日で閉店することにしました」と貼り紙が貼ってあった。

店の前は何度も通っていたが、自分には似合わないと思って入ったことがなかった。

でも今日は躊躇わずドアを開けた。

似合う帽子はやっぱりなかった。

大特価3000円の紙のそばに麦わら帽子が積まれていた。

形といい色といい普段は買わない帽子に今日は手が伸びた。

「これは男性モノですか」とたずねると

この店の最後となる店主らしき男性が

「いいえ女性もかぶれます」

試しにかぶって、前の方のツバをあげると

「ツバは下げてください。太陽の光から目を守ります。そして真ん中に。その方がお似合いです」

「これください」

麦わら帽子をかぶって38℃の青山通りを歩いた。

written by amano

暑中お見舞い申し上げます

ほんとうに暑い日が続きます

九州、東北の豪雨被害も記憶に新しいうちに

沖縄の台風被害に心を痛める夏でもあります

 

それでも

やっぱり夏なんです

開放的で

明るく楽しくて

 

そんな夏を楽しまないのは

もったいない

 

でかけましょう

解放しましょう

発散しましょう

 

2023年の夏は今年限り

人生は一度きり

限りあるいのち

二度と来ない今日を

かけがえのない日々を

 

あっ、えっと

弊社の夏季休業は下記の通りです。

2023年8月10日(木)─15日(火)

written by 太田

セミの泣き声がうるさい

たま〜に、ほんとたま〜に、もう亡くなってしまった友だちに

そっくりな人を街で見かけることがある。

もちろん、友だちは亡くなった歳のまま。

私だけ時を重ねている。

見かけるといってもすれ違う一瞬なのだけど

本当にそっくりだ。

一昨日も飲み屋でかわいがってくれた先生(お医者さんだったので先生と呼んでいた)を見かけた。

どんなことも受け止めくれそうな大きな体と

何でも教えてくれた知的な瞳で

横断歩道を渡ってきた。

暑い日だった。全部が嫌になるくらい。

「先生、わたしはちゃんと前を向けてるでしょうか」

なんでセミはあんなに泣くのだろうか。うるさい。

written by amano

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